NYXARIA JOURNAL / 2026.09.11
Tシャツのプリントに生地の編み目が透けて見える理由
届いたTシャツを明るいところへ持っていって、プリントの面を近くから見る。すると絵柄の中に細かい凹凸が浮かんで、生地の目がうっすら透けて見える。画面で見ていたときは、もっと均一な一枚の面でした。手が止まるのは、たいていこの瞬間です。
先に結論だけ書きます。プリントの面に生地の編み目が見えるのは、不良ではありません。ダイレクト・トゥ・ガーメント(DTG)という作り方を選んだ時点で、必ずそうなります。
プリントの面に、生地をふさぐ膜はできません
DTGは、生地の繊維そのものにインクを染み込ませる方式です。絵柄は、繊維が持つ色として定着します。繊維が染まるだけなので、編み地の凹凸は色が入る前と後で変わりません。
編み地は平らな板ではありません。糸のループが規則的に並んだ立体で、面には細かい山と谷があります。山の側の繊維はインクを受け取りやすく、谷の側に届く量は相対的に少なくなります。この差が、絵柄の上に生地の目の模様として現れます。
つまり、拡大して見えているのはインクの不足ではなく、生地の形そのものです。絵柄が均一に見えないのではなく、生地がもともと均一な面ではない。順番はこちらになります。
4.5 oz/yd²(153 g/m²)の編み地が、その凹凸をつくっています
NYXARIAのTシャツは、全型が同じボディです。Gildan 64000、生地厚は4.5 oz/yd²(153 g/m²)。素材は無地カラーがリングスパンコットン100%で、Sport Greyのみコットン90%・ポリエステル10%になります。脇に縫い目がない筒状の編み地(丸胴)に、肩から肩までのテーピング、センターの折り目を抑えるクォーターターンが入っています。
この生地厚は、Tシャツとしては中庸の位置です。厚手になるほど糸は太くなり、編み目の山と谷の高低差も大きくなります。4.5 oz/yd²は、目が出すぎない側に収まる設定です。
もう一つ効いているのが糸の作りです。リングスパンコットンは糸の毛羽が少なく、生地の表面が平滑に仕上がります。目の粗い糸に比べれば、インクが受け止められる面が揃うので、淡い色から濃い色への移り変わりは素直に出ます。糸の段階で何が違うのかはリングスパンコットンとは?にまとめてあります。数字ではなく手に持った感覚で厚みを掴みたいときは、4.5ozはどのくらい?153g/m²の厚さが近道です。
ボディの色によって、目の見え方は変わります
同じ絵柄でも、下にある色で印象が変わります。カラーはBlack、Navy、Sport Grey、Whiteの4色です。
| カラー | 編み目の見え方 |
|---|---|
| Black | 地の色が濃く、明るい色を置いた面ほど谷が影として残ります |
| Navy | 地の明度が上がるぶん、Blackより陰影の出方は穏やかです |
| Sport Grey | 杢の糸なので、繊維ごとの色の差が編み目の凹凸に重なります |
| White | 地が明るく陰影が出にくいため、4色でいちばん目立ちません |
Sport Greyだけは、理由が一つ多くあります。この色は杢糸で織られていて、混ざっている繊維ごとに染まり方が違います。編み目の凹凸に繊維単位の色の差が重なるので、近くで見たときのざらつきは4色のなかで最も強く出ます。安価に見せているのではなく、杢という糸の性格がそのまま出ているだけです。
Whiteは生地の特性で、純白よりオフホワイト寄りに見える場合があります。淡い色のインクを広く使った絵柄では、この地の色が階調の下敷きになります。
編み目が残ることは、着たときの利点になります
目が見える=安っぽい、と受け取られがちですが、着心地の側から見ると評価は逆になります。染み込んだインクは繊維の色になっているので、絵柄の位置に別の面が重なりません。プリント部分を指でなぞっても、まわりの生地との段差はほとんど感じません。
動きに対しても有利です。染み込んだ部分は繊維の動きが変わりますが、絵柄が一枚の面としてまとまっていないので、伸び縮みが一点に集中しません。腕を上げたとき、胸のプリントが引きつって突っ張る感覚が出にくいのは、この構造のためです。
手入れも、繊維に入った色を守る形になります
裏返して冷水・弱水流で洗い、低温乾燥か吊り干しにします。アイロンは裏返して低温、プリント面に直接当てません。漂白剤・柔軟剤・ドライクリーニングは避けます。表面を守る手入れではなく、繊維に入った色を守る手入れだと考えると、順番が頭に残ります。
方式による見え方と、不良の切り分け
手元の一枚がどちらなのかは、絵柄の全体を見渡せば判断できます。
- 方式によるもの:テクスチャが絵柄の全面に均等に出ている。濃い面では分かりにくく、淡い面ほど強く出る
- 方式によるもの:細い線の縁が、生地の目に沿ってわずかに揺れている
- 不良を疑うもの:絵柄の一部だけインクが抜けている、線が途中で途切れている
- 不良を疑うもの:絵柄以外の場所に色が付いている、位置が明らかに傾いている
線がどこまで細くなると再現の限界に近づくのかは、DTGで細い線はかすれる?で線の太さの側から書いています。揺れとかすれの境目を先に知っておくと、届いた一枚の見方が変わります。
不良や誤配送に当たる場合は、到着後30日以内に注文番号と写真を添えてご連絡ください。1点ずつ製作する受注生産のため、お客様都合の返品・交換はお受けできませんが、この一線だけは別に扱っています。製造に2〜5営業日、発送後の国内配送に1〜8営業日が目安です。
近くで見るか、着た状態で見るか
プリント面と目の距離で、見えるものは大きく変わります。手に持って顔の近くで見るときと、着た状態で人と向かい合うときでは、同じ絵柄が別の面として届きます。
着丈はSが71.1cm、3XLが83.8cm。身幅はSが45.7cm、3XLが71.1cmです。胸の位置にある絵柄は、向かい合って立つ距離から見られます。その距離では編み目の凹凸は視覚的に均され、残るのは色の階調と輪郭だけになります。近くで気になった質感は、人が見る条件では画面で見ていた印象に戻ります。
色面を大きく使った絵柄ほど、この差ははっきり出ます。AZURE REVERIE CAT Tシャツは淡い色の重なりで出来ているので、近くでは生地の目が、離れると色の移り変わりが前に出ます。線を主役にしたNOCTURNE ECHO CAT V2 Tシャツは、色面の面積が小さいぶん、近くで見てもテクスチャが気になりにくい構成です。
どちらの見え方が好みかは、絵柄の作りで決まります。アパレルの一覧で、色面の多い絵柄と線の多い絵柄を並べて見比べてください。
プリントの面に生地の目が見えるのは、生地を殺さずに色を入れた結果です。均一な面を優先すれば、生地をふさぐ作り方になり、そのぶん着たときの硬さと引き換えになります。手元の一枚は、引き換えにしない側を選んでいます。